ルプーのリサイタルを聴いた。
何年ぶりだろう?
昨年はポリーニのベートーヴェンリサイタルと重なり行けなかった。ザルツブルグ音楽祭でのリサイタル以来だから10年振りくらい??
あの時は調子が良くなかったようで、おまけにシューマンの幻想曲の3楽章では、停電でホールが真っ暗になるハプニングもあり、少し残念だった。(停電中も弾き続けていたけど)
今回は言葉にしたくないほど、心に深く感銘を受けた。全く作為や力みのない、繊細でリリシズムに満ちた、孤高で静謐な世界だった。異次元へといざなわれ、終演後もしばらく催眠にかかったようなボーッとした状態で帰宅した。
ピアノを弾く者として、コンサートはいつも色々観察しながら聴いているが、前から2列目の席のチケットをいただいたこともあり、どんなに弱い音でもピアノ全体が豊かに共鳴しているのには驚いた。
風貌も演奏する姿も、ブラームスが煙草を咥えてピアノを弾くあの有名な絵とそっくり。きっとブラームスも同じような音色を出していたのかもしれない。
巨木のようなどっしりとした胴体で、かなり鍵盤に近い状態で背もたれ椅子によりかかり、左足を右足にクロスさせて、微動だにせずあの太い指で極限の弱音を引き出す…
せめて弾く格好だけでも真似てみるが、手足の長さも違えば太さも何もかも対極にある体では無理がありすぎ…(笑)
でも何となく音の力みが取れるような気がする………(笑)
奏法もまだまだ追求できるし、また楽しみが増えた。
そして何よりも、ルプーのようにいつも心の底から湧き出るような歌心を大事にしたい。
ピアノの道はホント奥が深く、不思議な世界だ。
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